2017年8月 トレード歴66ヶ月(アイデンティティーのリスク、「錯覚の法則」)


2017年8月

※2017年8月当時の売買日記を読みながら作成(図も当時のものをそのまま転載)。

○8月8日
・ずっと統計を取っていたルール(大暴落の大逆行パターン)について、アエリアの上昇が取れなかったことからエントリーと再エントリーの条件について閃いた。そのアイデア通りに、6月と7月分のデータで検証したら、大きな改善が見られたことからルールがやや変更となった。
※統計を取り続けている中で、あるチャートパターンを見たりすると、このようなアイデアが閃き、大きな改善に繋がることがある。しかし、検証をするには、データをちゃんと取っていなければいけない。
※ルールが確立した瞬間。

○8月14日
・「オカルト銘柄を閃いた当初のワクワク感はどこへやら?と思うが、結局どんなルールだろうと淡々とルールに従い続けるしかなく、必ずドローダウンは訪れるわけでな」
※2017年3~4月に逆張りのルールを始めよう!と思っていたときにはあったワクワク感がいつしかなくなっていた。しかし、これはやや矛盾するが、ワクワクしながら現実的な検証を続けることが大事だと思う。やはり、ワクワクしないことには続かないわけで。
※2017年5月頃に検証したときには、「150%の玉でも行けるんじゃねえか!?」という夢のようなことを思っていたが、やはり50%が現実的であるという結論になった。

・厳密にはルールの定義通りではないアエリアが-4.77%LC。欲が出てエントリー範囲を広げると……。結局は、エントリーサインにのみ淡々と入って損小利大するしかない。例外ルールでも行っていた場合もあるだろうが、そうじゃない場合もある。そうなると、ルールに従うしかないという結論になる。

○8月24日
・「しかし、実際に回してみると、パターン1(統計波10%到達)と3(大暴落大逆行パターン)は良い感じだが、鉄板と思われたパターン2(トップから3陰線)は取れてねえなと」。
※いかにバックテストがあてにならないかということ。バックテストをしただけでは期待値プラスかどうかは絶対に分かりません。バックテストをして分かるのは、「もしかしたら機能するかもしれない」ということまでなんであって、リアルタイム検証をしないことには分かりません。更に言うと、リアルタイム検証をする中でルール自体にいくつもの改善点が見つかります。アイデアが閃きバックテストをしリアルタイム検証をして、実践として使えるようになるまでは最低でも3ヶ月~半年は必要だと思います。少なくとも私の場合、バックテストしただけでリアルタイム検証をしてないルールは恐くて使えません。

 


アイデンティティーのリスク

私は2015年の秋に、マーケットは自分の帰ってくる場所になったと思いました。

まあ、確かに、どのようなキャリアを歩むとしても、トレーダーという軸が出来たことは良かったんですが……。

ただ、トレーダーというアイデンティティーが身に付いた一方で、それを失うかもしれないという、この道に入ってきた当時はなかった新たな苦しみが生まれたと言いますかね。

最初に始めた頃は、別に失敗してそこから離れることになっても、失うものなど何もなかった。

リスクを取って仮に失敗したら、この業界を離れることになるかもしれない……、この仕事が出来なくなるかもしれない……。

この恐怖心は、アイデンティティーがまだ形成されてなかった駆け出しの頃にはなかったものです。

だから、マーケットが帰ってくる場所になった、キャリアの軸が出来た、トレーダーというアイデンティティーが出来た。これは、リスクでもあるんだなと。

ある仕事・ある業界が、自分の帰ってくる場所になりました、アイデンティティーの一部になりました。

それが、リスクなしで一方的なリターンだけをもたらすなんてことは、絶対にあり得ないんだなと。

まあ別に、私が破産しようが金持ちになろうが、誰にとってもどーでもいいことです。そんなことには誰も興味ありません(税務署を除く)。

アイデンティティーなんてのは、ただのサンクコスト幻想でしかないんですけどね。

人類は生存競争の過程で、サンクコストを評価してきた非合理的なグループが生き残ってきたために、その名残が残っているわけです。

ちなみに、アイデンティティーだけでなく、愛情もサンクコストの名残であります。

ただ、こういうことを外で言うと、間違いなくクズ野郎扱いされるため注意しましょう。

アイデンティティーや愛情というのは、無条件で絶対的に価値があるというのが社会的な通念となっています。それを、人類の進化の過程で身に付いてきたものだ~~みたいなことを言おうものなら……。

個人的には、アイデンティティーや愛情はとても素晴らしいものだと思います。ただ、トレードにおいては邪魔にしかならない。

トレードの最大の目的は理想の生活を実現するための手段。それ以上でもそれ以下でもありません。

本当に、色んな面からリスクについて考えさせられる道だなと思います。

 

書評:「錯覚の法則」

「錯覚の法則」西田文郎

ツキの大原則」の西田文郎さんによる、脳の性質について書かれた本です。

人間の脳は凄いもので、一度あることを信じてしまえば、主観ではそうとしか認識出来なくなります。

ちなみに私は「人生は小学生時代が永遠に続いているものである」と錯覚しています。あまり信じてはもらえないですが、私の主観では、そうであるとしか言いようがないのです。

暇があれば自分史を検証していて、「スゲー!」「楽しかった!」「奇跡だ!」と感想を連呼してるものだから、脳が錯覚しているんですね。

「楽しい人生」というのも錯覚に過ぎないのは分かっていますが、私の主観ではそうであるとしか思えないのです。

このように、脳がある錯覚を起こすような思い込みを「ゾーン」では信念と読んでいます。信念には、主観ではそうとしか思えないようにバイアスを掛けて解釈させる働きがあります。

「人生は楽しい」も「人生は楽しくない」も、どちらも錯覚なら、前者の信念を機能させた方が合理的です。

しかし、非合理的な信念が機能していると、不快な感情が出てきて合理的な信念を機能させることに抵抗してきます。

「人生は楽しくない」という信念が機能していると、「人生には楽しいことがたくさんある」ということを認めようとすると、恥や罪悪感といった不快な感情を出して抵抗してきます。

合理的な信念を機能させて非合理的な信念を機能停止させるには、非合理的な信念がもたらす感情をメタって、合理的な信念を機能させる行動をし続けることが大事です。

「人生は楽しくない」という信念が機能している場合は、どれだけ信じられなくても抵抗する感情が出てきたとしても、楽しい体験を積み重ねたり、人生の楽しかった感想を連呼したりして、 「人生は楽しい」という信念にエネルギーを注ぎ続けることが大事です。

そうすると、ある瞬間に閾値を超えて、「人生は楽しくない」という錯覚をしていた脳が、「人生は楽しい」という錯覚をするようになるため、世界が変わる瞬間がやってきます。

トレードにおいても、非合理的な感情をメタりつつ、確率的思考に基づく合理的な行動をし続ける必要があります。

感情をメタって感情と逆行する行動をし続けるというのは、ほとんど馴染みがない行為であるために、トレーダー的思考を身に付けるのは難しいのです。